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「2012年ロンドン語学留学記」(その3)−津田ミキエ

 私は昨年の7月から9月までの3カ月間、ロンドンへ語学留学に行って来ました。普段は司法書士事務所で働いています。社会人になってから語学留学するのは、短期間といえども大変です。小さいころからの夢をいつまでも諦めきれなかったため、事務所の皆さんや家族、友達他いろいろな方々の助けを受け、この何十年来の夢を実現することができました。今回の記事は、前回の続きで最後になります。

 オリンピックとパラリンピックが終わり、9月に入ると、ロンドンはとても寒い日が続くようになりました。その頃は、ホームステイを終え、ハウスシェアというスタイルで暮らすようになっていました。
 ハウスシェアは、一軒の家を数人で借りて共同生活する滞在方法です。部屋は別々ですが、キッチンやお風呂は共同で使います。私は4名で一軒の家をシェアしていました。一緒に住んでいたのは台湾人、韓国人、イタリア人などでした。
 時にカルチャーショックで驚くこともありましたが、基本的にみんな人懐っこく親切な人ばかりで、一緒にご飯を食べたりテレビを見たりして、楽しい生活でした。

住んでいたシェアハウス

 9月の半ばごろ、私はユーロスターという高速電車に乗って、パリへ行くことにしました。観光と、語学学校で知り合った友達に会うためです。
  一人でパリへ行くことに不安はなかったのですが、問題はユーロスターにありました。およそ30分も電車が海の底を走るのです!「もし線路内で電車が立ち止まったらどうしよう。火事があったら・・・?」などと、想像しただけで恐ろしかったのです。 とにかく、それを克服しなければパリへ行けないと自分に言い聞かせ、勇気を振り絞ってユーロスターのチケットを購入しました。

ロンドンとヨーロッパ大陸を結ぶユーロスター

  乗る前はそんな恐怖を感じていたものの、朝一番に出発する電車だったため、ユーロスターに乗った時からとても眠く、トンネル通過時は熟睡してしまっており、恐怖を感じることもありませんでした。ロンドンからパリの北駅までは、2時間程で到着しました。
  ロンドンとは違うパリの街並みはとても新鮮でした。あちこちにあるオープンカフェや街路樹がとても美しかったです。ただ、パリはロンドンに比べると、繁華街や地下鉄は治安が少し悪い気がしました。
  特に地下鉄は暗く、スリや怪しい集団も結構見られます。日本人の被害者も多いようで、地下鉄の主要駅ではフランス語と英語、そして日本語で「スリに注意してください」という内容の放送が流れていました。
 特に私がホテルを取った北駅周辺はワースト地域の一つだったらしく、夜中にホテルがある駅へ帰って来た時の駅周辺の恐ろしい雰囲気に、一瞬足がすくんでしまったほどでした。 それでも美しいパリの街では、たった2泊3日間で美術館や教会、セーヌ川などを見てまわり、友人にも会い充実した時間を過ごすことができました。
  パリからロンドンへ戻ると、ロンドン滞在期間は残り約2週間となっていました。住んでいるハウスには日本人がおらず、普段もひとりで行動することが多かったので、英語力は来た時よりだいぶ良くなっているように感じました。あともう数カ月滞在できたら、きっとさらに英語が上達しただろうなと思いました。

帰国を前に名所巡り

 残り少ない滞在時間を前に、語学学校の授業は少し減らし、今まで行きたいと思っていた所に行ってみることにしました。

王立公園キューガーデンズ。ユネスコの世界遺産に登録されている

キューガーデンズ内部

 そのうちの一つが、王立公園キューガーデンズです。この公園は、ロンドン中心部からほんの少しだけ離れたところにあり、園内は天国かと錯覚を覚えるくらいの美しさです。温室の中には世界各国の草花、庭園には季節の花々を見事に配置しています。
 この王立公園の中には日本庭園もありました。大きな公園の中で、ある程度のスペースを持っています。ロンドンには、この他にも幾つかの日本庭園があります。小さい空間の中に、自然をさりげなく演出する日本庭園は、庭好きのイギリス人からもとても尊敬され、高く評価されているようでした。
  そして、もう一つがトッテナムコートという、ヘンリ8世など歴代の王が住んだ宮殿です。ロンドンで知り合いになった友人に「ここが素晴らしい」と当初から教えてもらっており、ずっと行きたいと思っていたのです。トッテナムコートはもう宮殿としては使われておらず、観光のみとなっています。
 昔のままの調度品がそのままたくさん残されており、中世にタイムスリップしたかのような気持ちになれます。この宮殿の中で、実物を見ながら、大好きな西洋史に触れることができました。
 帰国間際には、有名なロンドンアイ(観覧車)にも語学学校の友人と行ってきました。約2千円の費用がかかりますが、それに見合うだけの素晴らしい景色が堪能できます。
 また仕事柄、司法関係には興味があったので、語学学校近くにあった最高裁判所に何度も通って、広い内部の見学をしたり裁判を傍聴したりして楽しみました。

ロンドンアイからのロンドンの街とテムズ川

英国の最高裁判所

 9月も終わりを迎える頃、私は帰国の日を無事に迎えることができました。3カ月間ということもあり、ロンドンで日本が恋しくなることはありませんでしたが、イギリスと日本の素晴らしい部分をたくさん知ることができました。
  例えば、ロンドンの街はとても美しいのですが、ごみは東京の方が少なく清潔です。また、ロンドンの店員には、ぶっきらぼうな人、フレンドリーでいろいろ話しかけてくれる人、歌いながら仕事をしている人など個性豊かな印象ですが、日本の店員の皆さんは、ほとんどむらなく丁寧で礼儀正しいです。
 こういったギャップに戸惑いながら、滞在期間中、 いろいろ苦労もありましたが、旅行ではあまり知ることができない部分を知ることができ、そして、たくさんの友人に恵まれたことが私にとって素晴らしい財産となりました。
  この春、週末を利用して韓国へ行き、ロンドンで知り合った韓国人の友人に会うことができました。私を食事に招待してくれ、いろいろな場所へ案内までしてくれました。
  アジア各国の友人は、かわいらしいまでに人懐っこく、そして面倒見がよい人が多く、ロンドンでも韓国でも、いつも私は彼らに対し感謝の気持ちでいっぱいでした。
  こういう貴重な経験ができたことも私の職場、取引先、家族の理解があったおかげでした。心から感謝しています。そして、ロンドンで知り合った友人達とは、今後も末永く良い関係をつなげていけたら、と思っています。
  連載はこれで終わりです。今まで読んでいただき、ありがとうございました。

(2013.05.29up)


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