会員からのお便り

『近世・奄美流人の研究』を出版−箕輪 優

 小生は今年2月、西郷隆盛ら多くの者が奄美諸島に流された実態をまとめた『近世・奄美流人の研究』を鹿児島市の(株)南方新社より出版させていただきました。

 現在、NHKの大河ドラマで「西郷どん」(原作・林真理子)が放映されています。そうした中、小著が日本経済新聞編集記者の目に留まり、同新聞の文化欄(6月5日朝刊)に原稿を書かせてもらいました。

 タイトルは「西郷ら奄美流刑の実像 〜罪人と島民の知られざる暮らしをひもとく〜」です。その中で小著の触りを紹介させていただきました。

小著(左)と本のチラシ(いずれも画像クリックで拡大します


 この本を上梓するきっかけとなったのは、10年ほど前に龍郷町出身で今は亡き両親の「家系図」作成に挑戦したことです。確定的ではありませんが、父方の先祖は流人ではなく、江戸時代後期の文化年間(1804〜1818)に鹿児島の帖佐郷(藩政時代の外城の一つ、現在の姶良市の一部)から鍜治職人として来島し、奄美大島北部の喜瀬集落に住み着いたようです 。

 そのような流れの中で、近世期(主として江戸時代)における「奄美流人」について、強い興味を持つようになりました。東京からたびたび奄美各地に出向き、地元の郷土史家の協力を得ながら調査をしました。その集大成が『近世・奄美流人の研究』となった次第です。

 本の中では、特に西郷隆盛だけに焦点を当てて書いたわけではありませんが、前記の大河ドラマ「西郷どん」の放映や明治150周年記念の時節柄、小著に書いた西郷の人物像がマスコミやネット上で何かと話題になっているようです。

 と言いますのは、西郷のイメージについて、小著の内容と大河ドラマの内容とが全く相反しているからです。小生としては、大河ドラマにおける「西郷隆盛」の人物像は、厳然とした史実に基づくものではなく、あくまでも「娯楽性」や「商業性」を優先させた「ご当地番組上の人物像」として捉えております。

 人それぞれ置かれた立場があり、その立場によって歴史の捉え方も違います。それは自然なことであり構わないと思います。しかし、自分の故郷の歴史が決して他から押し付けられたものであってはなりません。

 特に奄美は近世期260年間にわたり薩摩藩の「植民地」として圧政・搾取を受けたという歴史的事実があります。奄美の歴史を自分自身のものとして、奄美の“本当の歴史”を常に探究する姿勢が必要ではないか、と強く考えております。

 ところで、小著巻末には延べ人数にしてわずか335人だけですが 、奄美各島ごとの「流人一覧」を添付しています。どうか小著を御手に取っていただき、「ワキャシマ」に流されてきた人にはどのような人がいたのか、確認してみてはいかがでしょうか。

フィル―ドワーク中の小生
加計呂麻島諸鈍・.大屯(おおちょん)神社にて(2013年)

同左
徳之島・ムシロ瀬にて(2013年)

 奄美各島における研究活動の際には、思いがけず多くの方々からご親切をいただきました。紙面の都合上、このことをいちいち申し述べることはできませんが、感謝の言葉もありません。「シマ」の方々の優しさに触れることができました。

 特に徳之島では、実高(現奄美高校)時代の同窓生・広田勉君(徳之島町議会議員)には公私共にお忙しい中、徳之島全域を案内していただきました。記して深く感謝申し上げます。


 末筆ながら、今回縁あって初めて投稿させていただきました。天候不順のこの頃です。会員の皆さま方におかれましてはどうかご自愛いただき、ご健勝の上益々ご活躍されることを衷心より祈念申し上げます。

(みのわ・ゆう=実高S44年機械科卒)


 HP管理人から⇒箕輪さんは公務員定年退職後、大学院で歴史学を学び郷土史研究家として活躍されています。著書は、フィールドワークで何度も奄美へ足を運んで記した労作です。

 購入については、南方新社様のご配慮により1冊税込み価格4,104円のところを税込み・送料無料3,000円の「特価」で購入することができるそうです。

 その場合、こちらの添付した「注文票」をご使用(ダウンロード)いただき、直接「南方新社」へ注文してください。「特価」は書店では扱っておりません。

 注文は eメール:info@nanpou.com または電話:099-248-5455、fax:099-248-5457 のいずれでも受け付けています。

(2018.07.24up)



HOMEへ

Copyright (C) 東京配田ケ丘同窓会/ホームページ委員会 All Rights Reserved.