黒糖焼酎のふるさとを訪ねて−HP管理人
HP管理人は11月の奄美高校創立100周年記念式典出席に合わせ、「里の曙」のブランド名で知られる町田酒造株式会社(中村安久代表取締役社長)の工場を見学した。
黒糖焼酎は昔ながらの手作り感いっぱいの所で作られているとばかり思っていたが、現在の黒糖焼酎は品質管理が行き届いた大規模工場で製造されていた。
さらに、瓶詰め作業など工程の一部は自動化されており、焼酎粕(かす)処理のプラント導入で環境面への配慮を行うなど、黒糖焼酎も近代的な製造工場で生産されていることを知り認識を新たにした。
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町田酒造株式会社
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「里の曙」製造工程のイラスト(画像クリックで拡大します)
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見学所要時間はビデオ視聴を含め約1時間。1人で訪問したにもかかわらず、上記イラストの通り麹(こうじ)作りから仕込み、発酵、蒸留、貯蔵・熟成、瓶詰め・検査、箱詰め・出荷の全工程を担当者が丁寧に案内してくれた。
町田酒造は鹿児島県龍郷町大勝にある。株式会社町田建設が、住用村(現奄美市住用町)にあった酒造会社の資本金を全額取得後、平成3年に現在地へ移転し操業開始した。
工場近くの畑ではサトウキビの刈り入れが行われ、町内にある昔ながらの黒糖製造工場からは甘い匂いが漂っており、いかにも黒糖焼酎のふるさとを訪ねている感がした。
焼酎の原料には米や芋、麦、そば、海藻などさまざまなものがある。黒糖焼酎は「黒糖と米麹を併用すること。さらに大島税務署管内で製造すること」を条件に製造が認められている。
通常、黒糖焼酎は米麹1に対し黒糖1.2〜2.0の割合で作られているが、同社はほとんどの商品を米麹1:黒糖2.5 の割合で作っている、という。
原料となる米はジャポニカ種の高品質米。黒糖は奄美産だけでは足りないため、沖縄やフィリピン産なども使用しているそうだ。
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主力ブランドの「里の曙」
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樫樽製の貯蔵タンク
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ずらりと並ぶ貯蔵タンク
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原料となる黒糖
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蒸留機(ポットスチル)
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特殊な瓶にラベルを貼るスタッフ
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同社によると、創業当時は常圧(1気圧)での蒸留で黒糖焼酎を製造していた。しかし、常圧蒸留で作られた焼酎は独特の「クセ」があったため、都会の若者らにも黒糖焼酎を楽しんでもらいたい、と蒸留機内の気圧を低くした減圧蒸留機を導入。今では一般的になったが、当時の黒糖焼酎業界では初めてのことだった。
独特のクセを好む消費者がいる中で、減圧蒸留で作った一般受けする軽快な味はこれまでの黒糖焼酎のイメージを変え「若者や女性の黒糖焼酎ファンを増やした」と、言われているそうだ。
さらに、現在では常圧蒸留と減圧蒸留の2種類による蒸留機と樫樽(かしだる)を使った貯蔵方法などを組み合わせ、多様な味が楽しめる製品を多く出荷できるようになった、という。
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樫樽上に並ぶ製品の数々
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もろみ(左)と蒸留後の焼酎を手に説明するスタッフのSさん(研究棟内部)
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町田酒造では品質管理と研究開発、それに環境面への配慮にも力を入れている。研究棟には実際の製造ラインの25分の1サイズの設備を稼動させ、実際に仕込みを行いながら発酵状況などの分析を行い、新製品の開発に役立てている。
ところで、小生は蒸溜を行った後の焼酎粕の処理は海洋投棄するものとばかり思っていた。この面についても、焼酎粕を濃縮、炭化するプラントを導入し、飼料や土壌の改良材に変え再利用している、という。
杜氏を務める長谷場洋一郎取締役工場長は「焼酎業界に携わって約30年になるが、美味しい焼酎をより多くの人に飲んでもらおうと、今でも新しい製品や新技術の開発などに取り組んでいる。黒糖焼酎の頂を極めるのがモットーだ」などと、黒糖焼酎作りへの思いを語っていた。
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瓶詰め・検査・出荷場
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焼酎粕の処理プラント
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私事ながら、実は小生の生まれ故郷も龍郷町の大勝だ。人口約6千人の龍郷町では、町田酒造の他にも奄美大島酒造と山田酒造の2社が黒糖焼酎を製造している。
龍郷町は山が多く水に恵まれた土地だ。特に本茶峠を源とする大美川が流れる大勝には水の浦や川内など水に関連する地名がある。酒造会社は昭和40年代半ばまで1社だったが、新たに焼酎工場が進出したのも豊富で美味しい水が得られる地の利があったからかもしれない。
ふるさとの風土と文化、歴史に育まれ作られている黒糖焼酎。工場見学で作り手の真摯(しんし)な姿に触れてから飲むそのお酒は、一層味わいを増したような気がする。
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龍郷町の大勝集落(東京龍郷会の山下敏道さん提供)
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