外房に春を求めて−仁禮善美
小生は2月某日、家族を伴い千葉県勝浦市の「かつうらビッグひな祭り」や朝市などを見学した。うららかな陽光を浴びながら市内各地区のひな祭り会場を巡り、昼食では地元で獲れた新鮮な魚介類を食するなど、家族ともども一足早い外房の春を楽しんだ。
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覚翁寺(かくおうじ)山門前の特設ひな段(約600体)
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勝浦駅前の墨名(とな)交差点の特設飾り(約800体)
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−ひな祭り一色の街を歩く−
ビッグひな祭りは、2001年に全国勝浦ネットワークの縁で徳島県勝浦町から約7,000体のひな人形を譲渡されたのが始まりだ。その後、市民等からも不要となったひな人形が寄贈され、現在では市内各所に合計約30,000体が飾られ、街はひな祭り一色になる。
中でも、圧巻なのは60段の石段に約1,800体が並ぶ「遠見岬(とみさき)神社」の飾り付けだ。観光客はその光景に圧倒され、人気の記念撮影スポットとなっていた。
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某店先の竹筒段飾り
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飾り付けの準備をするご婦人
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笛や太鼓で祭を盛り上げる観光協会スタッフ
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十二単(ひとえ)のひな人形
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芸術館の飾りひな人形
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また、有料会場となっている市芸術文化センターでは「日本最大の享保雛」(15体段飾り)や貴重なひな人形(御殿雛、平飾り雛等)から江戸・明治時代のひな人形まで数多く展示されていた。
さらに、同センター内の大ホールでは6,000体が天井まで届きそうなほどの勢いで並べられ、その数の多さと美しさに息を飲み言葉を失うほどのすごさだった。
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芸術文化交流センター内の大パノラマ展示(約8,000体)
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朝方、飾り付けをしていたご婦人に話を聞いたところ、朝の6時ごろから飾り始め、観光客がいなくなった頃に片付ける。10日間ほど、ひな人形を毎日出し入れするのだ、という。雨や暴風時は屋外には飾らず、店内などに少数飾るだけとのことだった。
そんな話を聞き、大変なご苦労に頭の下がる思いでいっぱいだった。まさに、地域の一体感と住民の協力を得なければ開催できない地域の一大イベントだと実感した。
そんな取り組みが功を奏して、今では期間中(今年は2月24日〜3月5日)に約20万人の来場者が見込まれ、「経済効果は14億円余に上るほどになった(市商工会)」と、いう。
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某店内の吊るしひな飾り
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−朝市と鯛の浦−
ひな祭り巡り前に見学した「勝浦の朝市」の歴史は古く、400年以上の歴史があるそうだ。また、石川県輪島市と岐阜県高山市の朝市と共に日本の3大朝市として知られている。
店を冷やかしながら、実演販売中の名物「わらび餅」2個を食べた。そして、朝食には別腹で「マグロの漬け丼」を注文。最高の味付けでマグロの食感も良く、朝から得した気分になった。
昼食は、車で20分ほど南下した小湊市で取ることにした。ここは日蓮宗開祖の日蓮聖人の生誕の地で、誕生寺のほかにも史跡が多い。
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朝市通り
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朝市通りの踊り連
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サワラのかぶと焼き
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キンメイダイのかぶと煮
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小湊市・内浦湾の鯛の浦は、国の特別天然記念物に指定されている。遊覧船で5分ほど沖に出ると、水深は10〜20メートルになる。
船上から餌をまくと、60センチほどの大きなタイが海面まで浮上。バシャバシャと音を立てて餌に群がるのが見え、池のコイが餌を取る姿にも似ていた。
警戒心の強いタイは通常、海面に姿を見せない魚だ。しかし、ここでは地域の人々が昔からタイを神の使いと信じ、禁漁区にしてタイの捕獲を禁じているそうだ。
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誕生寺参道
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遊覧船乗り場入り口
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餌に群がるタイ
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岩場で一休みする海鳥の群れ
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当初の計画では朝市がメインで、ひな祭りはついでに見物しようと思っていた。しかし、ひな祭りの人形の数と地域の一体感、観光客の多さにはビックリ! 圧倒された。一度は見るに値する大イベントだと思った。
さらに、いずれの料理も過去に味わったことのない絶品の味付けだった。久しぶりに家族サービスもでき、喜んでもらえた。外房の春を満喫し気分もリフレッシュ。全てにおいて大満足の家族日帰り旅行だった。
※HP管理人から=10数年前、愛知県での在勤時に豊田市足助町のひな祭り「中馬のおひなさん」を見学したことがあった。足助は山間の町で、山里での古い町並みに並ぶ民家や商家に古くから伝わるおひなさんや土びな(土人形)が玄関先や店内に飾られていた。
足助のひな祭りもそれなりににぎわっていたが、今回の勝浦市の超ビッグなひな祭りに比べると、地味であった。港町と山間の町との地域性や風土が色濃く反映されている、と思った次第だ。一度、こちらのひな祭りも訪ねてみたい、と思っている。
(実高S44年卒、2017.03.03up)