北アルプス・後立山連峰 を歩く−HP管理人
小生は8月初旬、登山仲間のYさんと2泊3日の日程で北アルプス・後立山連峰の針ノ木岳から鳴沢岳などを歩いた。2日間は小雨に降られ眺望は今一つだったが、かれんな高山植物を観賞。快晴となった3日目は左右の景観を見ながらの尾根歩きとなり、それなりの山旅を存分に楽しむことができた。
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立山連峰(左)と剱岳(3日目)
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1日目(扇沢から針ノ木小屋まで)
JR信濃大町駅(長野県)近くのビジネスホテルで前泊したため、扇沢駅には早朝バスで入り午前7時前に到着した。扇沢駅は立山黒部アルペンルートへの長野県側の入口で、映画「黒部の太陽」でトンネル工事などの舞台となった所としても知られている。
ちょうど今年は黒部ダム完成50周年の節目に当たる年だ。そのせいでもないだろうが、朝早くから登山客や黒部ダム行きのトロリーバスを待つ大勢の観光客でにぎわっていた。
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観光客らでにぎわう扇沢駅
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出発地点で登山届けを済ませ、同7時過ぎに出発。同時に小雨が降り出したが、大雨にはならないだろうと判断し、そのまま緩い登りの山道を歩き始めた。大沢小屋を過ぎ、1時間ほどで針ノ木雪渓に到着。雨がやや激しくなったため雨がっぱを着、雪渓を歩くためのスパイク状の簡易アイゼンを山靴に装着した。
この針ノ木雪渓は、白馬や剱沢と共に日本3大雪渓の一つに数えられているそうだ。雪渓に入ってからもガスがかかり、視界は良くなかった。しかし、
ほぼ50メートル置きに小さなこいのぼりの標識が道案内をしてくれ、1時間ほどで雪渓の登りを終え再び山道に入った。
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針ノ木雪渓をバックに友人(左)と小生
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ヤマアジサイ
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ニッコウキスゲ(黄色)
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シナノキンバイ
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キヌガサソウ
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ウスユキソウ
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チングルマ
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イワカガミ
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山道沿いにはいろんな種類の高山植物の花が咲き誇り、 足取りの重い我らを励ましてくれた。雪渓を過ぎてから2時間ほどで、針ノ木峠にある針ノ木小屋に到着。その後、短時間ながら土砂降りの雨となった。
この峠は、戦国武将の佐々成政による「さらさら越え」の話でも知られている。成政は山岳案内人を先導として、遠州浜松(静岡県)に城を構えていた徳川家康に会うため、敵の領地を避けて厳冬の北アルプス(富山県側)からこの峠などを越えて信州に出た、という。
そんな昔に思いをはせるとともに、明日の天候回復を願いながら山小屋の布団にもぐった。
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雨上がりの中、針ノ木峠からは遠くに槍ヶ岳(3180メートル)が見えた
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2日目(針ノ木小屋〜針ノ木岳〜スバリ岳〜赤沢岳〜鳴沢岳〜新越山荘)
夜が明けても小雨は降っていた。早々に朝食を済ませ、この日も大降りにはならないだろうと判断し午前6時半に出発した。途中で下山してくるグループと行き会った。聞けば「小屋から山頂まで行ったが、視界はゼロだった」という。ちょっと気持ちが落ち込んだ。
1時間ほどで針ノ木岳(標高2820メートル、日本200名山)の頂上に立った。ガスの中、山頂からは眼下に黒部湖が見える程度で、360度の眺望は望むべくもなかった。今回の山歩きの中では、立山連峰や槍・穂高など一番の大パノラマを期待していただけにとても残念だった。
気を取り直し次のスバリ岳(2752メートル)に向かった。小一時間ほどで到着。この頃になると小雨も上がり、雲の合間から時折、立山連峰や剱岳が見えるようになった。
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赤沢岳に向かう登山客
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携帯食料で軽く栄養補給し、一路赤沢岳(2677メートル)を目指した。今回の行程ではスバリ岳から赤沢岳までが一番距離のある尾根歩きだ。その名の通り、赤沢岳は赤い色をした山塊だった。
先を行く9人組の一団を抜いてから、今度は30代の男性に追い着かれた。話したところ、車で新潟県長岡市を夜半に出発。今朝の4時半に扇沢駅を歩き始め、夕方の5時過ぎには扇沢駅に戻る予定だ、と言うではないか。何と我々の2泊3日の行程を12時間余で歩くのだ、という。我々を追い越した男性は、たちまち見えなくなった。
我らはマイペースを守りながらコースタイム通り赤沢岳山頂に到着。見晴らしは少し良くなり、立山連峰や剱岳それに黒部湖や立山側のロープウェイの駅舎なども見えるようになった。山頂すれすれにイワツバメ
が飛び交う中、おにぎりで昼食を取りながら素晴らしい景観を堪能した。
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ハクサンシャクナゲ
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キキョウ
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ハクサンフウロ
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クルマユリ
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黒部湖をバックに(赤沢岳頂上)
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その後、鳴沢岳(2641メートル)を経て新越山荘に着いたのは、コースタイムより小一時間ほど遅れた。赤沢岳で休憩時間をたっぷり取ったためだ。山荘の部屋では既に先客が陣取り、山談議に花を咲かせていた。
そのうちの神戸市から来た73歳の男性は、定年を迎えた60歳から山登りを始め、日本100名山はおろか200名山の登頂も達成。現在は300名山を踏破中で、
今回は北アルプスの蓮華岳などを登るため、数日前から山に入っているのだ、という。先の30代男性を含め、すごい人たちがいるもんだと感心した。
3日目(新越山荘〜岩小屋沢岳〜種池山荘〜扇沢)
3日目は前日の天気予報の通り、快晴となった。前日に歩いた山や朝日に映える立山連峰と剱岳などの写真などを撮りながらゆっくりと歩いた。所々、尾根が崩落して危険な個所もあったが、種池山荘には2時間半ほどで到着した。
天候回復を見込んだのか、この山荘前ではこれから爺ヶ岳や鹿島槍ヶ岳などを目指す多くの登山客が到着し、一時休憩を取っていた。我々は扇沢駅を目指して下るのみとあって、ゆっくりと休憩を取り山旅の余韻に浸った後、後ろ髪を引かれながら下山を始めた。
時折、来し方の針ノ木岳などを見上げながら下ること約2時間半。扇沢駅には正午前に到着した。ここは標高1433メートルながら山頂に比べやはり暑かった。
火照った体を冷やすため、黒部湖へ抜けるトンネル掘削工事の中では最も困難を極めた、という破砕帯から湧き出ている冷たい水を飲んだ。さらに、自動販売機で売っているかなり割高なビールで喉を潤し、今夏の山旅を無事終えた。
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蓮華岳(左)と針ノ木岳
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縦走した針ノ木岳や赤沢岳などの峰々を望む
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鹿島槍ヶ岳
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種池山荘前のコバケイソウ群落
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余談ですが、3日間とも平日だったせいか、東京近郊の山で見かけるような山ガールにはついぞお目にかかれなかった。その代わり、小生(64歳)より一回り上の元気な“山ガール・山ボーイ”をたくさん拝見した。眼福にはあずかれなかったが、元気と目標をいただいたような気がする山旅だった。
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(山田信廣=S43年実高卒、2013.08.13up)
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