会員からのお便り

富士山麓一周ウォークを達成−小勝竹雄

〜一周140kを毎月1回、12回1年で完歩〜


 今、低山や田舎の道などを歩くウォーキングが中高年を中心にブームとなっている。小生夫婦も某旅行社が企画する日帰りの「ぐるっと富士山麓一周ウォーク」に昨年(2014年)3月から参加した。毎月1回のペースで、今年2月まで全コースを12回に分けて歩き、ちょうど一年で富士山麓(140km)を一周した。

 一周ウォークは、富士山(3776m)を中心に富士五湖のほとんどと忍野八海や白糸の滝、噴火の遺物溶岩隋道と風穴、牧場、花の公園を巡り、それに由緒ある神社やお寺などを観光し、四季折々の自然と接しながら歩くものだ。

 我々は毎回、東京・立川発午前8時のツアーバスを利用。バスは参加者40人前後を乗せ、中央高速道経由でウォーキングスタート地点に向かい、同10時前後には到着した。参加者は平日だったせいか、60代半ばから自分(77歳)と同じ年頃の世代が多かったが、それでも40歳前後の若者(?)も数人ほど見られた。

 この企画を始めて10年以上経つという旅行社は、冬場はやや温暖な静岡県側、夏場は冬の雪と北風を避けて山梨県側を歩くコース設定をしている、という。季節を考えた良い工夫だと思った。

 歩く方向は時計回りで、好天の日は右手に雄大な富士山が眺められたが、雨や濃霧になると全く姿を見せない日も多かった。全行程の距離は一周約140km。一日当たり約12kmを約4時間前後で歩いた。

静岡県富士市の八王子集落で(2月コース)

 <参加募集内容> は以下の通り

@山道・舗装道を4〜5時間の行程 A雨天決行 B四季に合わせた装備と服装 C昼食弁当・お茶付き D現地コースまではバス往復 E毎月1回、12回1年間で一周終了 F全12回参加者には「完歩証」授与 G不参加時は一年後の同コースに参加して完歩となる
参加費=1回6,500円(税込み、15年3月出発から7,500円)、希望者に限り旅行傷害保険は1回500円または1,000円

 <一周ウォークの模様> は以下の通り

◆第1回(3月コース)・2014年3月13日(木)雨
静岡県富士宮市の富士山本宮浅間大社<スタート>〜大石寺〜白糸の滝<ゴール>


 立川をバスで出発する時から降り出した雨は、スタート地点の富士山本宮浅間大社に着いても止まなかった。気温がかなり下がっている中、軽く準備体操をして出発。防寒着を着込み雨具をかぶり、真冬並みの装備で40人のハイカーが一列縦隊になって歩いた。

 先頭と最後尾にはリーダーが付き約100m近い長い列となった。小高い丘を登った上の広い敷地に大石寺と付属の施設が建ち並び、ひときわ目を引いた。降り続いた雨はゴールの白糸の滝に着いた辺りでようやく止んだ。

 熱いコーヒーと地元のまんじゅうを購入し、帰りのバスの中でおなかに入れた。冷えた体がホカホカと温まり、心身ともにほっとした。雨天ながらも楽しく歩き、満足な一日だった。

◆第2回(4月コース)・2014年4月17日(木)晴
静岡県富士宮市の白糸の滝<スタート>〜田貫湖(東海自然歩道)〜陣馬の滝〜猪の頭公園<ゴール>


 バスはすっかり晴れ渡った中をスタート地点の白糸の滝に順調に着いた。出発までの短い時間、世界遺産登録で有名な白糸の滝と周辺を観光。白糸の滝を出発して間もなく、広く開けた場所に出た。富士山が眼前に堂々とそびえている。他を圧巻する美しい眺めだ。地図を広げると朝霧高原、まかいの牧場、畜産試験場とあった。

 牧場には乳牛が放され、近くを通る時は風に乗った牛糞の臭いが生の大自然を実感させてくれた。やがて田貫湖に到着。「ダイヤモンド富士」の写真で有名な湖だ。湖沿いには遅咲きの桜が満開となっていた。桜と湖、その後方に立つ富士山の風景が絶景だった。

◆第3回(5月コース)・2014年5月15日(木)曇りと濃霧
静岡県富士宮市の猪の頭公園<スタート>〜麓〜 貯水池〜根原分校〜県境〜本栖<ゴール>


 静岡県は曇り空だが、富士山一帯は麓まで独特の濃霧が立ち込め姿を見せなかった。しかし、5月のさわやかな風を受けながら、朝霧高原の広い草原を心地良く歩いた。麓地区にさしかかると牧場、東京農大富士農場、大型農業のお茶畑の広大さに息を飲み、雄大な景観に感動した。

 コースは高原を過ぎてからきれいに整備された東海自然歩道を歩いた。やがて本栖湖に近いゴールの本栖に着いた。バスは帰る途中、地元物産販売の「道の駅朝霧高原」に寄ってくれた。参加者一同、休憩を取り買い物をした。

富士一周のイラストマップ(画面クリックで拡大します)

◆第4回(6月コース)・2014年6月12日(木)曇り時々晴
山梨県・富士河口湖町(旧上九一色村南部)の本栖<スタート>〜本栖湖(青木ヶ原樹海)〜富岳風穴〜鳴沢氷穴(自由見学)<ゴール>


 本栖からスタートして本栖湖の脇を通り抜けて青木ヶ原樹海に入った。うわさ通り樹木がびっしりと繁茂しており、やや暗い感じがした。コースは東海自然歩道を歩いたので道に迷うことはなかったが、道を外れ樹海に入ったら迷うのは必至だと思った。

 ようやく明るく開けたコースになった。噴火で出来た風穴と氷穴の見学があり、見応えがあった。今回のコースは行程15kmで、歩行時間が5時間。変化に富んだコースだったが、体力的に少々厳しく感じた。

◆第5回(7月コース)・2014年7月17日(木)晴時々曇り
山梨県・鳴沢村の鳴沢氷穴<スタート>〜道の駅なるさわ〜河口湖〜道の駅かつやま<ゴール>


 朝から晴れ上がった鳴沢氷穴をスタート。今回は夏の季節の暑い中を歩いた。木陰の山道では一息付けたが、舗装道路に出て歩くと暑さは一層厳しかった。鳴沢村にさしかかると村役場と学校、郵便局があった。村からの富士山の眺めは良く、大きな屋敷と立派な家が多く豊かな農村地帯のようだった。近くには安倍晋三首相の別荘や大会社の保養所などが点在し、大きなゴルフ場もあるということだった。

◆第6回(8月コース)・2014年8月21日(木)晴
山梨県・富士河口湖町の河口湖・道の駅かつやま<スタート>〜八木崎公園〜富士ビジターセンター〜北口本宮富士浅間神社<ゴール>


 真夏の晴天の空の下、強い日差しで河口湖の青い湖面と遊覧船がキラキラ輝いていた。そんな湖畔の暑い中を約一時間歩いた。ようやく八木崎公園に着き休憩に入りほっとした。熱中症を心配したリーダーから、多めの水分補給と着帽の指示が出た。

 河口湖の近くには、漫談の綾小路きみまろの豪邸があるそうだ。また、コース沿いには、きみまろが町に寄贈したという黄金の七福神が鎮座(ちんざ)していた。リーダーから「中高年者の人気スポットになっている」と説明があった。かんかん照りの暑い中、ゴールの北口本宮富士浅間神社まで全員が頑張ってたどり着いた。

長い列を作って農道を歩く参加者(山梨県富士吉田市で、9月コース)

◆第7回(9月コース)・2014年9月18日(木)曇りのち晴
山梨県富士吉田市の北口本宮富士浅間神社<スタート>〜忍野八海〜花の都公園<ゴール>


 先月の暑い夏から今月は初秋の涼しい中、浅間神社をスタートした。浅間神社は富士山への登山信仰の神社として、一年を通し多くの参拝者が訪れるという。今回は神秘な湧水として有名な忍野八海を一巡し、見応えがあった。

 ここからは、次の花の都公園までは快適な東海自然歩道を歩いた。花の都公園はその名の通り、各種の花が咲き誇り見事の一言だった。

第8回(10月コース)・2014年10月16日(木)晴
山梨県・山中湖村の花の都公園<スタート>〜山中湖〜籠坂峠〜籠坂夕月公園〜須走富士浅間神社<ゴール>


 花の都公園をスタートし山中湖を目指した。小高い峠にさしかかってから間もなくして、右手に富士山がゆったりと雄大な姿を見せた。実にいい眺めだ。少し下った所で青くのどかな山中湖が見え始めた。遊覧船とボートが浮かび、ハクチョウがゆったりと泳ぎ、まるで絵はがきを見ているような美しい光景だった。

 また山道に入り、登って行くと静岡県境との籠坂峠。ここから車が多い舗装道路を下り、ゴールの富士登山須走口の由緒ある須走富士浅間神社に着き、見学と参拝をした。

◆第9回(11月コース)・2014年11月13日(木)晴
静岡県・小山町の須走富士浅間神社<スタート>〜水土野〜滝原〜印野熔岩隧道<ゴール>


 今回のスタート地点の富士登山須走口周辺は自衛隊の東富士演習場があり、いたるところに立ち入り禁止の表示と柵があった。時折、演習場から聞こえる爆発音の中を歩いた。駐屯地と大きな自衛隊病院もあり、病院は地元の方の利用も可能という。

 農家や畑地も多い滝ヶ原に着くと、富士登山御殿場口登山道の表示板があった。ゴールの印野熔岩隋道に着くと40分の自由時間があった。希望者は1707年の富士山大噴火で出来た熔岩隋道(御胎内)の見学をした。

静岡県御殿場市の小木原集落(11月コース)

大岩集落のお地蔵さん(静岡県富士市、2月コース)

静岡県小山町の滝ヶ原集落(11月コース)

山梨県忍野村の忍野八海(9月コース)

山梨県山中湖のハクチョウ
(10月コース)
忍野村花の都公園のキバナコスモスのお花畑と私
(9月コース)
 
山梨県小山町の「道の駅すばしり」から仰ぎ見る富士山(11月コース)

第10回(12月コース)・2014年12月11日(木)雨のち曇り
静岡県御殿場市の印野熔岩隋道<スタート>〜たまごひろい牧場〜須山〜忠ちゃん牧場<ゴール>


 初冬の冷たい雨の中をスタート。残念ながら景色を見ることも出来ず、ひたすらもくもくと歩き続けた。しかも車の多い国道469号のため、一列縦隊で気を付けて歩いた。国道沿いの「卵ひろい牧場」を過ぎ、ようやくゴールの忠ちゃん牧場に着いた。

 広い草原には乳牛と羊が放牧され、店内ではジンギスカン料理が提供され、乳製品やソフトクリームなどが売られていた。熱い牛乳で身体を温め、ほっと一息付くことができた。

◆第11回(1月コース)・2015年1月15日(木)雨と霧
静岡県の裾野市の忠ちゃん牧場<スタート>〜十里木高原〜桑崎〜丸火自然公園<ゴール>


 当日は雪と凍結が心配されたが、静岡県側は雨だった。忠ちゃん牧場で熱い牛乳を飲んでから、寒い雨が降る中を出発した。前回コースと同じく、車の多い国道を気を付けながら歩いた。ようやく十里木高原入口にたどり着き、山道に入り安心した。

 天気が良い日は、「富士山こどもの国」地点からゴルフ場の向こう側に富士山が見えるというのだが、雨と霧で全く見えず残念だった。ゴールの丸火自然公園まで一日中、冷たい雨に打たれながら歩いた。

◆第12回(2月コース)・2015年2月12日(木)晴
静岡県富士市の丸火自然公園<スタート>〜吉原富士〜大岩〜富士山本宮浅間大社<ゴール>


 いよいよ最終回の日となった。しかも今日は日本晴れで、富士山もくっきりと雄大な姿を見せていた。丸火自然公園をスタート。ススキの草原が広がる中、富士山を眺めながら歩け気分が良かった。大岩地区は農家が点在し野菜畑が広がり、すこぶるのどかだった。

 やがて、一年前の山麓一周の出発地点・富士山本宮浅間大社に到着した。バスの運転士が待ち受けていて、迎えてくれた。到着する度、参加者みんなが大きな拍手と握手を交わし、お互いに健闘を称え感激を味わった。帰りのバスは一段とにぎわい、車中には達成感に満ちた笑顔の輪が広がった。

ウォークツアーの発着地点となっている富士山本宮浅間大社(静岡県富士宮市、2月コース)

一周ウォークを終えて

 振り返ればこの一年間、当日の天候を気にしながらの参加だった。費用は事前に支払っており、天候が悪いからといって参加しないわけにはいかなかった。冷たい雨の降る中を歩いている時には「お金を払ってまで何でこんな“苦行”をしなければならないのだ」と、思うことも間々あった。

 しかし、この一周ウォークを終えた今、 改めて日本の自然の美しさと雄大さを身を持って実感した。そして厳しさも。それと四季が織りなす豊かな自然の移ろいにも感じ入った。

 俳句の季語に「山笑ふ」(春)、「山滴(した)たる」(夏)、「山粧(よそお)う」(秋)、「山眠る」(冬)とあるが、まさにその通りだと思った。新緑、サクラ、ツツジ、深緑、コスモス、紅葉、枯野 ・・・ 。鮮やかな光景がまぶたの奥に焼き付いている。

 また、自分より年長者と思われる多くの方々がかくしゃくとした姿で歩いているのに励まされ、今後の目標にもなった。
 これまでの富士登山では、頂上から遠くの風景や眼下に広がる裾野や山麓を何となく眺めていた。今回の富士山麓一周によって、次の富士登山では新たな目で、一年かけて一周した場所を思い浮かべながら眺める楽しさが増えた。

(東京配田ヶ丘同窓会顧問=実高S33年卒、2015.10.06up)



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