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晩夏の尾瀬を歩く−HP管理人

 HP管理人はこの夏の終わり、友人と二人で尾瀬を2泊3日の行程で歩いた。当初の計画では、尾瀬を代表し日本百名山にも称せられる燧ヶ岳(2346m)と至仏山(2228m)を縦走する予定だった。が、2日目に燧ヶ岳への道を間違えたことから計画を変更。尾瀬沼から尾瀬ヶ原をゆっくりと歩き、山の鼻小屋で宿泊し翌日、至仏山に登頂した。
 計画通りとは行かなったが、森林地帯では樹木が発するというフィトンチッドを浴び、尾瀬ヶ原では夏の終わりを惜しむかのように咲く草花を観賞しながら、静かな山歩きを心行くまで楽しんだ。

色付き始めた尾瀬ヶ原のウルシ

夕暮れの尾瀬沼(右奥は燧ヶ岳)

尾瀬ヶ原から燧ヶ岳を望む

 初日(大清水〜尾瀬沼まで)

 上越新幹線上毛高原駅から路線バス利用で、出発地の大清水に着いたのは正午過ぎ。昼食などを手早く済ませ歩き出した。この夏は天候不順が続いており、3日間の好天を祈りながらの出発だった。だらだらとした林道を1時間ほど歩いたところで、ようやく山道にたどり着いた。
 ミズバショウが咲く初夏や紅葉の時季を外したことで、横浜から来た小学生の団体とすれ違ったくらいで登山客は少なかった。三平峠辺りからは木道がかなり整備され歩き易く、1時間弱で長蔵小屋に到着した。
 宿泊手続きで、お風呂の利用時間帯を知らされ「山小屋で風呂に入れるのか」と驚いた。さらに驚いたのが温水洗浄便座があることだった。閑散期を狙ったことで、8畳間の部屋には我々2人だけ。 夕食も申し分のない内容で、小屋主には申し訳ないと思いつつ手足を大きく広げて床に着いた。

2日目(尾瀬沼〜沼山峠先〜尾瀬沼〜下田代十字路〜山ノ鼻)

 朝食を終え、6時半過ぎ出発した。目指すは燧ヶ岳だ。しばらくすると燧ヶ岳へ分岐する山道があるはずだった。間違えているかなと思いつつ1時間ほど歩いたところで、逆から歩いてくる女性に声を掛けた。
 すると「この道は御池に行くバス停に出る道。全く方向が違っており、引き返すのが良い」 と指摘を受けた。これから引き返し、燧ヶ岳を目指しても往復で2時間のロスがあるため、潔く燧ヶ岳を諦め、尾瀬沼から下田代十字路を経由し宿泊予定地の山ノ鼻に直行する計画に変えた。
 間違えた道標前で記念の一枚を撮り、ブナなどが茂る樹林帯を抜け沼尻平の湿原で小休止。さらに白砂峠を越えて段小屋坂を下り見晴で昼食を取った。その後、湿原に咲く草花や風景の写真を撮りながら木道の上を歩き、2時間弱で山ノ鼻の小屋に到着した。
 ミズバショウの季節などの繁忙期は、木道は観光客が数珠つなぎになり歩くのも大変になるそうだ。前記した通り、尾瀬は閑散期とあって観光客は少なく、自分らのペースで自由に歩くことができた。ただ、上空ではこれからの紅葉シーズンに向け、山小屋に荷を運ぶヘリコプターが何度も往復し、時々山の静けさをかき消していた。

尾瀬ヶ原の木道を歩く(正面は至仏山)

 ところで、尾瀬はミズバショウで有名だ。下2段目の写真はよく紹介されるミズバショウの清楚(せいそ)な姿だが、その右横が成長した葉の写真だ。数年前の夏、妻を伴い鳩待峠から山ノ鼻まで歩いたことがあった。
 山道の湿地帯などに長さ約80センチ、幅30センチほどの大きな葉が数多く生えているのを見掛けた。その時、しばらくは何の葉か思い浮かばなかった。この時季のミズバショウは、おそらく観光パンフレットなどには載らないであろう。その清楚なイメージとは大違いで、落差のある対照的な姿だった。

間違えた道標を前に記念の一枚

天を覆うブナの大木

初夏のミズバショウ=提供(Photo by (c)Tomo.Yun) URL(http://www.yunphoto.net
成長したミズバショウの葉

ウメバチソウ

オゼミズギク

イワショウブ

オヤマリンドウ

ツリガネニンジン

サワギキョウ

ゴマナ

オクトリカブト

ノアザミ

アキノキリンソウ

ヒツジグサ
ナナカマドの実

最終日(山ノ鼻〜至仏山〜鳩待峠)

 鳩待峠からのバス時間を考え、朝食はおにぎりにしてもらい午前5時半に出発した。霧雨が降っており至仏山は煙っていた。昨日同様、しばらくしたら上がるだろうと判断し、雨がっぱは着なかった。
 至仏山は山体が蛇紋岩を主に形成されていることから、他の山より森林限界点が低いそうだ。 しばらく歩いたところで、樹林帯を抜け低木と高山植物が繁茂する所まで来た。本来なら、燧ヶ岳や尾瀬ヶ原を見渡せるのだが雲に覆われどこも見えなかった。
 急峻なガレ場(岩場)を注意深く登った。山ノ鼻からのこの道は、登り専用だとのことだった。確かに整備されてないこの山道で、下山者と離合していくのは危険が伴うと思われた。
 山の中腹まで登ったところで、雲間から燧ヶ岳の頂上などが時折見えるようになった。頂上に着く頃には雲海も無くなるのではないか、と期待を込めながら一歩づつ登った。山小屋から歩くこと約3時間。頂上の上空には爽やかな青空が広がっていた。
 しかし、四方の山々の頂上は見えたものの、尾瀬ヶ原は雲海の下に沈んでいた。持参したおにぎりを頬張り、遅めの朝食を取った。

霧の中、急峻なガレ場を登る

雲海の中に浮かぶ燧ヶ岳

小至仏山(2162m)から望む燧ヶ岳(中央)、左の山体は至仏山

至仏山頂にて、友人と小生(右)

ガレ場は小至仏山を越えても続いた

 30分ほど休んだ後下山開始。下山路もガレ場は続き、小至仏山を下り悪沢岳からの尾根に出るまで慎重な足取りで歩を進めた。小至仏山辺りになると雲海は所々で切れ、尾瀬ヶ原の見晴小屋などが見えるほど展望が開けてきた。また雲海が次々と峰の下から湧き上がり、刻一刻と山肌を這うように立ち昇っていく景観は圧巻で、しばし見とれ見飽きることがなかった。
 悪沢岳分岐辺りからは木道が多くなり、歩行は楽になった。 頂上から約2時間半で鳩待峠のバス停に到着。20分余で戸倉のバス連絡所に着いた。友人とはここで解散し、友人は往路と同じ行程で、小生は近くの温泉で疲れを癒した後、高速バスで川越に出て帰宅した。

 ・その他の写真をWebフォトギャラリーで見る(JPEG)

 あとがき・・・・・今回の山歩きで驚いたのは2泊目の小屋にも風呂があり、温水洗浄便座があったことだ。燧ヶ岳への道を教えてもらった女性によると、尾瀬は水が豊かでこの両地区には麓から商用電源(東電)がきている、という。山小屋を思わせるのは、ちょっと湿っぽい布団だけで、食事内容も申し分なくまるで民宿に泊まっているようだった。燧ヶ岳を断念したこともあり、近い将来またゆっくりと訪ねたいと思った。

(山田信廣=実高S43年卒、2014.09.08up)



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