会員からのお便り

「1年の計は元旦にあり」−アマミノクロウサギ

 年の初めに少々考えることがありました。1990年代半ば、朝日新聞に山田風太郎の「あと千回の晩飯」というエッセーが連載されていました。読んで字のごとく「わが人生で晩飯を食うのもあと千回ぐらいだろう」という意味です。
  当時、風太郎は72歳(79歳で没)。老境に入った人間の身辺や心境を、皮肉とユーモアあふれる文体で赤裸々につづっています。人生の第4コーナーを回って、あとはお迎えが来るのを待つばかりといった内容のエッセーです。
 小生は宇検村田検集落の集団検診で、「コレステロール値が高い」と注意を受けました。以来、晩飯は一口一口かみしめて味わい、楽しんでいます。宇検村役場の担当女子職員に「食物を口に運ぶたびに箸を置くように」と指導されましたが、そこまでは出来ていません。世間には「素晴らしい人」とそうでない人がいます。その違いは生き方にあるのでしょうか。そんな事を考えながら20回は咀嚼(そしゃく)しています。

メジロとヒカンザクラ(宇検村湯湾にて、宇検村在住のT.Sさん提供)

 年の初めに考える事の一つが「人生を考える」事です。若い頃にこんな事を考えていたら、もう少し「まともな大人に」なっていたかもしれません。Uターンで帰ってきた62歳過ぎから、そのような事を考えるようになりました。
 古希間近の僕たち世代が若い頃の昭和30年代は、素晴らしい先輩たちが目移りするくらい多くいたように思います。先輩の背中を追いながら、良い大人になろうと努力したつもりでした。が、結局とりとめもなく時間だけが過ぎて、気が付いたら前期高齢者直前の62歳となっていました。
 風太郎のエッセーの中に「死は推理小説のラストのように、本人にとって最も意外なかたちでやってくる」とあり、また「最愛の人が死んだ夜にも、人間は晩飯を食う」と書いています。そんな風太郎のひょうひょうとした人間性にひかれ、読みあさったのを記憶しています。
 「世界一の長寿国日本」「薬好きの日本人」「3時間待ちで3分診療」など厚生医療界の現状をどのように考えたらいいのでしょうか。まずは医師・看護師の指導の下、自分の病気をきちんと理解して状況を正しく、上手に相談すること。そして冷静に病気と対峙(たいじ)しながら、人生を達観する事も大切だと真剣に考える69歳のお正月です。

夏に咲くハマユウの花(奄美市の朝仁海岸にて、mayuさん提供)

 HP管理人から=アマミノクロウサギさんから「島での暮らし」をテーマとする短歌13首をいただきました。この欄にはうち1首を載せ、残り12首は配田ヶ丘短歌会のコーナーに掲載しました。 こちらもご覧ください。

  四温の陽(ひ) 木々のつぼみも
         ふくらみて
寒緋桜に 春舞い降りる

(佐々木一宇=実高S38年卒、2014.01.09up)



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