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中国ボランティア出張記−アマミノクロウサギ

  小生は3月24日から同30日まで、中国・江蘇州の張家港市にある友人(中国人)経営の工場へ出張旅行した。出張とは言っても、先方が渡航費だけを持ってくれる報酬無しの個人によるシニア海外ボランティアのようなものだ。 出張内容は、工場改善のための5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)指導で、製品の歩留まり率を高くしながら工場の安全操業などを確保するのが目的だ。

友人経営の工場にて。中央の女性は通訳、その左が友人で小生は右端

 なじみのない地名の「張家港市」だが、日本との関わりは何と言っても鑑真和上だ。奈良の唐招提寺を創建した鑑真が苦難の末、日本へ渡来した最後の出発地として知られ、日中両国の仏教文化の交流に大変縁の深い土地である。
 同市は上海の北方・長江(揚子江)下流域の南岸に位置しており、人口は約90万人。現在は新興工業都市として、内陸部では中国初の保税区(貿易に関する優遇策)が設置されるなど、天然の良港「張家港」を中心にめざましい発展を遂げている。
 さて、奄美からその張家港市に行くため、奄美空港から羽田〜スカイライナー〜成田〜上海のルートを取った。奄美を午後2時30分に出発し、上海虹橋空港に着いたのは現地時間の午後11時前(日本との時差は1時間)。近郊のホテルで1泊し、張家港市の工場には翌日の昼前に着いた。
  かつては日本の中堅企業の多くが現地に合弁企業を作り、進出していた。しかし、現在では人件費などの高騰によって、タイのバンコクやミヤンマーなど東南アジアへその多くが移っているようだ。
  小生の中国への偏見かもしれないが、中国人には「だます人は賢い」「だまされる人は愚かだ」という発想が根底にあるように感じてならない。また個人・企業を問わず、利用価値のあるものに対しては、三顧の礼を尽くして迎えるものの、それが無くなったら追い出されたり邪魔者扱いされたりする、と感じている。
  それでも小生は、友情を信じ日本人の義理固さを伝える思いで、「友人に協力することを惜しみません」。と言うのも友人は、小生が現役時代に某重工メーカーからNASDA(当時の宇宙開発事業団、現在のJAXA・宇宙航空研究開発機構)に出向した際、米国のケネディ宇宙センターで同僚として一緒に仕事をこなし、苦楽を共にした仲だからだ。
  その友人は「中国全人代表」の肩書きを父に持つその家の長男で、国有企業の払い下げ工場を経営する「お坊ちゃま」だ。現在は工業用洗濯機・リネンサプライ仕上げ機械を製造販売する中国市場トップシェアのメーカーで、約1000名の従業員を抱える中企業だ。
  日本の工場などでは当たり前の5Sだが、小生が友人に細かいところで「駄目出し!」をするのだけれど、なかなか意思が伝わらず、通訳の女性もいら立ったりしていた。友人の工場へはこれまで計8回出張しているが、文化的土壌や考え方の違う人たちに、この5Sを教えていく難しさをいつも感じている。

PM2.5にかすむ高層ビル群

 ところで、中国ではPM2.5(微小粒子状物質)による大気汚染が問題になっており、日本でもその影響が心配されている。しかし新聞・テレビの報道にあるように、その対策には全く手がつけられていないのが実情だ。 この港の風景を見てもお分かりのように、天候は「晴れ」ているが、川向こうのビル群はかすんで見える状況だ。
  毎日少しずつ、じわじわと悪化する現実を全く感じていないようだ。 中華レストランで鶏肉や卵を食べるにも、鶏の餌は大丈夫だろうか。病死した鶏ではないだろうか。野菜の農薬と肥料の管理は大丈夫だろうか。使っている水は等など、正直破れかぶれな思いで箸をのばし、とても食事を楽しむ雰囲気ではなかった。

鶏の頭が入った中華料理(右上の皿、先般撮影の資料写真)

  大気汚染ばかりでなく河川や地下水の汚染状況から、日本の高度成長期に見られたように、そう遠くない将来には当時の日本を大きく上回る形の公害大国として、大きな国内問題が起きそうな予感がする。
  帰国後、上海を中心に鳥インフルエンザが発生し、死者が出ていることも分かった。奄美は中国の近隣にあり、渡り鳥も飛来する当地の住民にとっては、とても気になる状況だ。
  話は元に戻るが、今回の出張指導でも工場の従業員が5Sを理解し、実践していくのにはまだまだ時間がかかりそうだ、と強く感じた。「くわばらくわばら」とおまじないを唱えながら、今後も中国へのシニア海外ボランティアの旅が続きそうだ、と思っている。

(佐々木一宇=S38年実高卒、2013.04.06up)


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