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香港で山を歩く−HP管理人

  HP管理人は10月初旬の4日間、約13年ぶりに香港を訪ねた。グルメとショッピング、そしてコンクリートジャングルのイメージばかりが強い香港。「歩ける山があるの?」と奇異に感じるかもしれないが、郊外にはトレール(山の小道)と呼ばれるトレッキングコースが数多く整備されている。
 小生は40歳前後の4年間、同地で駐在していたことがあった。今回の旅は、6年前に病気のため62歳で亡くなったトレッキング仲間の友人Y・K子さんのお墓参り後、当時の仲間で往時を偲びながら歩いて会食し、旧交を温めるのが目的だった。日本からは3名、香港在住者2名が参加した。
 英国の植民地だった香港は1997年7月、中国に主権が移譲され現在の正式名称は「中華人民共和国香港特別行政区」となっている。人口は約720万人。面積は東京都の半分程度(1100平方キロメートル)で、香港島・九龍・新界の3地区に分類され、うち九龍と新界は大陸側にあり、新界が中国本土と境を接している。
  最近、香港でも健康志向の高まりで、多くの老若男女が山歩きを楽しんでいる、という。休日だったこともあり、軽快な服装でトレッキングコースを歩いている香港人や西洋人を多く見かけた。ダブルデッカー(2階立建て)バスやタクシーが走り回り、広東語が飛び交う騒々しい香港とは別の顔を見せる香港の自然を、トレッキング記として写真主体にまとめてみた。ご高覧いただければ幸甚だ。
(なお、地名等の広東語字体は日本の漢字で表記した箇所もあります。香港の略図はここ)。


地下鉄柴湾駅から墓参り後、石奥村まで(香港島地区)

柴湾駅近くの高層住宅群と柴湾歌連臣角墓地(右手の山)
奥にはビクトリアハーバーを隔て九龍側の超高層住宅群が見える

 香港名物の飲茶を朝食兼昼食として楽しんだ後、地下鉄柴湾駅から歩いてY・K子さんの墓地を目指した。お墓の情報が乏しく探し出すのに一苦労した。が、警察官の助けも借りて、墓地の管理事務所で地番を教えてもらって、なんとかK子さんの遺影を見つけ手を合わせた。
 香港在住の友人によると、平地の少ない香港も墓地不足で、かつて普通に行われていた土葬が禁止され、最近では団地形式(約30センチ四方)の墓が多くなっている。また最近では、香港島南方に位置するラマ島沖合の限られた海域では散骨もなされている、ということだった。
 お墓参り後、墓地の上のキャッチウオーター(取水路)からドラゴンズバック(龍背)のトレールに出た。スタンレー半島などの景観や尾根の上空を滑空するパラグライダーの飛翔を楽しみながら、石奥村へ通じるバス道路に下った。ダブルデッカーバスに乗り石奥村へ出て、タイ風レストランで早めの夕食を取った。行程約5キロ、お墓参りを含め約4時間。

柴湾駅から歩いて山上の墓地を目指す

お墓参り後、遺影をバックに

墓石が建つお墓もある
団地形式のお墓(使用前)

ドラゴンズバックは海からの上昇気流が常に吹き、パラグライダーの好適地となっている
当日は5人が気持ち良さそうに飛んでいた(左下はゴルフ場)

蒸しエビのニンニク風味料理
セロリやニンジンなどを炒め、タロイモの籠に盛り付けた野菜料理


西湾亭から黄石馬頭まで(新界地区)

シャープピークと大浪湾の砂浜

 香港の自然景観の中で小生が一番気に入っているのが、写真撮影地点の辺りからシャープピーク(左の山、海抜468メートル)と大浪湾を望むこの風景だ。ここまで来るには、地下鉄とミニバスを乗り継いで終点の西湾亭で降り、1時間ちょっと歩かねばならない。
 西湾村を過ぎて、右手の海などを見ながらゆっくりと坂を上って行くと、小さな峠に出る。 そこから少し下ると突然、そそり立つシャープピークと真っ白な砂浜が目の前に現れる。訪れる皆が、しばしこの景色に見とれることになるだろう。ちょっと大げさかもしれないが、北アルプスの槍ヶ岳を思い出すほどだ。小生にとっては、とても懐かしい景観だった。
 香港在住の友人は、この景観を会社のHP(ホームページ)トップに掲載し、小生も約20年前、ここからの風景写真を社報(帰国報告)で使ったことがあった。この大浪湾のビーチに来るには、先ほどの西湾亭から2時間ほど歩くか、船をチャーターするしかない。そのため、こんな綺麗な所にもかかわらず訪れる人は少なく、よって香港では珍しくゴミが少ない観光地となっている。

茶店から見る大浪湾の砂浜
ちょっとリゾート地の雰囲気が漂う
大浪湾の茶店で昼食を取る中、まったりと時間が流れる

 駐在員時代、トレッキング仲間とこのシャープピークから写真の中にある小さな岬の奥のビーチに下りて来た時、ちょっとうれしい(?)事があった。うら若き西洋人の女性3人が、下着1枚で波と戯れ遊んでいた。後で、「雄大な景観に感激し大自然の懐に抱かれたかったのだろう」と理解したが、仲間全員の目が点になってしまった。
 シャープピ−クに上るには、海岸沿いを歩いてから途中の尾根に出て、そこから上るルートなど幾つかあるが、今回は時間の関係から最短コースで登頂した。そのルートはガレ場や岩場が多く、場所によっては両手を使う必要があり、香港の山の中では難度が高い方だ。マクレホーストレールの第2段の峠(大浪凹)から、往復3時間ほどかかった。
 その後、だらだらとした海岸線などを経て黄石馬頭に到着。ダブルデッカーバスで西貢に出て、海鮮料理を久しぶりにいただいた。行程約18キロ、休憩含め約8時間。

登頂前シャープピークをバックに

山頂からは香港の山や海ばかりでなく、中国側の町や山も見える

シャープピークへの案内板。英語と広東語に加え、日本語の表記もあった
海岸線のひなびた家屋

西貢の海鮮市場。食べたい魚介類を調達しレストランに持ち込む

蒸しエビ。素手で殻をむきタレを付けて食べる

甲イカのフライ料理

シャコを揚げた料理
夜遅くなってもにぎわう海鮮料理レストラン

 前記したように、小生の香港再訪は10余年ぶりだった。その間、香港では主権移譲後に始まったアジア通貨危機による不動産価格の大暴落や、それに続くSARS(重症急性呼吸器症候群)の影響で、観光客が激減し香港経済は大打撃を受けた。
 しかし、中国からの観光が解禁されたことや香港ディズニーランドのオープンなどによって、最近では「大挙して押しかける」という状況になっている、という。また、欧米諸国や日本、中国本土からの投資も増加し、現在では東京やシンガポールと同様、アジアにおける金融センターとしての地位を確立している。
  返還時、約620万だった人口はその後、中国本土からの移民などで100万人ほど増えたそうだ。確かに、郊外にも超高層マンションが林立し、地下鉄の路線数が7つとなり、さらに5路線を建設中ということを考えれば、人口増加とその経済発展ぶりをうかがい知ることができる。 まさに、香港人のたくましさと、したたかな適応力の高さを感じる旅でもあった。           友人等提供の写真を見る

(山田信廣=S43年実高卒、2012.10.12up)

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